債権管理は、中小企業においても欠かせない業務の1つです。今回は消滅時効に関する規定をみていきます。

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この記事を書いた弁護士
渡邊裕太郎

特に静岡県内の中小企業に対する法的サポート、事業承継及び相続に積極的に取り組んでいます。

1 消滅時効とは

権利者が、法律で定められた一定の期間、権利を行使しないことによって、権利を失うことになる制度を「消滅時効」といいます。

なお、法律で定められた一定の期間、占有者が所有の意思をもって物を継続して占有することにより、占有を正当化する権利である本権を取得することを認める制度を「取得時効」といいます。

2 消滅時効の対象にならない権利

消滅時効の対象にならないのは、主に以下の権利です。

⑴ 所有権(民法166条2項)
⑵ 所有権基づく物権的請求権等(⑴で定めた所有権の実現のため)
⑶ 担保物権(民法396条)

3 債権の消滅時効期間

民法第166条(債権等の消滅時効)
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

民法では、債権者が権利を行使できる時(客観的起算点)から10年が経過したときに加えて、債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年が経過したときも、債権は時効によって消滅するとされています(166条1項)。

なお、改正前の民法では、債権の消滅時効の原則的な時効期間を、「権利を行使することができる時」(客観的起算点)から10年と定め(改正前民法166条、167条)、その上で商行為によって生じた債権については5年間(改正前商法522条)とし、その他職業別に短期間の時効期間を別途定めていました(改正前民法170条~174条)。

これが民法改正により原則として消滅時効期間が主観的起算点から5年間、客観的起算点から10年間と整理されるに至っています。

もっとも、中小企業の債権管理の場面においては、債権者は契約に基づく履行期を把握しているため、客観的起算点と主観的起算点は一致するので、5年で消滅時効が完成することになります。

「中断」と「停止」から「更新」と「完成猶予」へ

改正内容

改正前民法においては、消滅時効の進行や完成を妨げる事由として、「中断」と「停止」を定めていました。

「中断」とは、単に時効が一旦止まるというのではなく、それまで進行してきた時効期間をゼロにリセットして、再度時効期間をスタートさせることをいいます。
また、「停止」とは、時効完成の直前に、法律上定められた事情が生じた際に、一定期間が経過する時点まで時効の完成が延期されることをいいます。

改正民法では、「中断」と「停止」という言葉が、意味はそのままにそれぞれ「更新」と「完成猶予」という言葉に変更されました。

中小企業の債権管理においては、単に時に5年の時効を意識するだけではなく、これらの「更新」や「観戦猶予」がなされているかを確認することができれば望ましいです。

しかし、実際はマンパワーや管理コストの問題からそこまでの管理は難しいことが多いと思われます。
そのため、当事務所の顧問先様には、とにかく5年以内に債権回収を行うように助言させていただいています。